企業にとって重要な節目である周年。それをただのお祝いと捉えるか、目的を達成するためのチャンスと捉えるかで、その後の命運は大きく左右されます。
「そもそも周年って何?」「何のために周年事業をするの?」と思っている人もいるかもしれません。まずは周年事業について基礎から解説しましょう。
企業の周年イベントと聞いて、どんなイメージが湧くでしょうか? 記念式典や講演、懇親パーティー、記念品の配布などと答える人が多いかもしれません。確かに従来の周年イベントは、社員や取引先などに対する慰労・感謝に主眼が置かれていました。しかし最近では周年事業の目的そのものが変わりつつあります。
実は周年は、組織に「変化」をもたらす絶好の機会です。こうした考え方が主流になったのは2008年のリーマンショックのころから。経済環境が激変する中、日本企業の経営基盤の弱さが露呈し、大企業の社員であっても必ずしも安定した未来が約束されているわけではないことを誰もが痛感しました。こうしたことから、インナーコミュニケーションなど企業内部から経営力を強化していく施策が重視されるようになり、周年という機会を活用する潮流が生まれたのです。
組織に変化をもたらす貴重な機会としての周年の意義は、「過去:変わらないものを知ること」「未来:変えるべきものを知ること」の2つの視点から考えると理解しやすくなります。
創業10年後の企業の生存率をご存じですか? 答えはわずか6%。その後20年で0.3%、30年で0.02%にまで下がります。企業が何十年も続くのは、万に一つの奇跡であることが分かる数字です。そして長寿の企業には、必ずその理由や独自の強みがあります。周年を機に過去を棚卸しすることは、企業の存在理由をしっかりと見つめ直すことにつながるのです。
分業化が進んだ大企業において、社員全員が同じ方向を見られる機会はなかなかありません。また、事業環境の変化が著しい今の時代、すべての経営者がターニングポイントにおけるかじ取りに悩んでいます。周年という大きな節目に、目の前にある課題やこれから歩むべき道筋を改めて示すことで社員の意識をそろえる―—そのことが新たな成長を後押しする貴重なきっかけになります。
まずは、組織にとって最重要課題は何かを考えるところから始めましょう。時代が急変した際、ビジネスモデルや組織体制を直ちに変えられる組織はさほど多くありません。社名や企業理念も同じです。担当者もいないし決まった予算もない、普段はなかなか手をつけられない大きな課題に取り組むベストなタイミングが周年事業なのです。
長期ビジョンの策定や幹部育成研修といった特別なプロジェクトを計画しやすい周年は、普段は担当部門での業務に注力する役員や幹部社員などに、全社的な課題に目を向けてもらう絶好のチャンスです。
部門ごとに業務内容や方針が異なり、企業としての一体感を醸成するのが難しい―こうした組織課題に直面しがちな大企業も、大きな節目である周年期間中は「同じ会社で働いている仲間である」という思いを自然な形で共有できます。そのためグループ各社を巻き込んだ大規模な風土改革もスムーズに進められるのです。
それぞれの「企業らしさ」を示す重要なメッセージである「企業理念」ですが、大企業や合併企業などでは社内の隅々にまで浸透しにくいという悩みもあります。このため、組織として何を大切に考えているか、何が強みなのかを社員に自分事として捉えてもらう機会として周年を活用する企業が増えています。
「創業者の思いに立ち戻る」「参加型のイベントで話し合う」などの施策によって、社員が自然な形で気付きを得ることで、仕事に取り組む姿勢を主体的に変えていけるような仕掛けも増えています。研修などを通して「組織の一員としてどのようにアクションを起こしていけばいいのか」を明確にする行動指針をつくり、行動変容のきっかけにすることもあります。
周年では、特定の日を設定して、大規模なイベントや式典を開催することもあります。社員全員が同じ時間・空間を分かち合う取り組みは、社員間のコミュニケーションを活性化し、組織における一体感や連携の強化につながります。
周年事業への取り組みは、社内・社外それぞれに向けたブランディングに貢献します。社内に向けては社員のロイヤリティを向上させることであるべき企業文化を醸成し、社外に向けては周年を機に新しい姿を発信することで、企業価値や認知度を向上させることができます。
<まとめ>
本記事では、周年について最低限知っておきたいポイントを解説しました。周年はただのお祝いイベントではありません。社内外に新しい風を吹かせる絶好のチャンスであることを認識し、目的を持って取り組むことが何よりも大切です。周年事業を成功させるためのヒントやノウハウは他にも数多くあります。本サイトで具体的な手順や他社の事例などを紹介していますので、ぜひともお役立てください。
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