周年基礎知識

周年事業の準備とスケジューリング

 

1. 長期戦になる周年事業のプロセスとスケジューリング

 

周年事業は「来る○○年に当社の周年事業を実施する」との経営サイドの意思表明や確認に基づき、その準備活動が始まります。

準備期間は早くて1年、場合によっては2、3年かかるケースもあります。周年事業の実行期間は半年から1年の短期戦ですが、準備期間を含めたトータルの周年事業期間は1年から3年の長期戦になるのが普通です。

それを考えると、周年事業推進のコアとなる社員にとっては、気が重くなるような難事業に見え、思わず腰が引けるかも知れません。しかし、踏むべき手順とポイントを踏まえれば、それほどの難事業ではありません。

周年事業のプロセス概要は次の通りです。

 

(1)準備プロセス(期間:通常は1年から2年)

このプロセスでは、周年事業に関する社内各種調査・分析・現状把握を行い、その結果に基づき周年事業基本方針、周年事業推進体制、経費概算などの検討を行い、期間・規模等周年事業の全体像を描きます。全体像を描いたら、次に自社経営における周年事業の位置づけ、周年事業コンセプト、周年事業のターゲットなどを明確化します。

 

(2)企画プロセス(期間:通常は1年から2年)

このプロセスでは、施策ごとのスケジューリングが必要になります。専門性の高いスケジューリングになるので、ここでは経験が豊富なコンサルティング会社や制作会社を決めてその協力を得るのがおすすめです。また、周年メンバーの定例会議を毎月開催することが重要です。施策の内容確認や進捗管理・PDCA回しが必要だからです。

 

(3)実行プロセス(期間: 1年)

このプロセスでは、スケジュールに沿った周年事業各種施策を実行すると共に、メディア等への広報活動を展開します。特にスケジュール管理と実行が重要になります。ここでも施策ごとの定例会議開催が不可欠で、各施策のチームリーダーは、施策の進捗状況を確認するだけでなく、施策実行中に生じる問題やチームメンバーの悩みを吸い上げ、解決にあたる必要があります。

 

(4)アフタープロセス(期間:周年事業終了後)

このプロセスでは、周年事業の成果を分析・評価し、問題点を整理し、それを次の周年事業の改善に役立てます。同時に、周年事業を契機に開始したブランディング活動・経営革新活動等にもフィードバックし、周年事業の成果を社内で継続的に活用できる仕組みを構築します。

 

 

2. 周年事業の成否を左右する「準備プロセス」のポイント

 

周年事業のゴール(実行プロセス)は、準備・企画プロセスで練り上げた各種施策をスケジュール表に沿って進めてゆけば良いので、混乱のリスクは割と低いようです。

その一方で、混乱のリスクが高いのが準備プロセスです。

周年事業のコンセプト設計、経費見積もり、周年事業推進体制構築など日常業務で経験したことのない多種多様な業務が発生し、しばしば試行錯誤的な取組みにならざるを得ない事態に直面するからです。

しかし、このプロセスも次のポイントを押さえれば、混乱のリスクを極小化できるでしょう。

 

準備プロセスの勘所とは?

準備プロセスにおいて重要な業務は「周年事業基本方針」、「周年事業推進体制」、「経費概算見積もり」の検討と決定です。その他の諸々の業務はこれら業務の派生的業務とも言えます。これらの重要業務において重視すべきポイントは、基本的に次の4つです。

 

(1)コンセプトの明確化

周年事業の準備においては「何のために周年事業を行うのか」のコンセプト明確化が何よりも重要です。

コンセプトが曖昧な周年事業は「多大な時間と労力と経費をかけたのに、何の変化も起きなかった。会社も変わらなかった」結果になるからです。周年事業のコンセプト作りの基本は「自社の企業価値をいかにして表現・発信するか」だと言われています。

 

(2)ターゲット設定

周年事業のコンセプトを社内外に発信するためには、「誰にコンセプトを伝えるのか」のターゲット設定が第2のポイントになります。BtoB事業を展開している企業が、一般消費者向けの企業イメージ広告を打っても意味がありません。

様々なステークホルダーのうち、コンセプトを一番伝えたいステークホルダーは取引先か、顧客か、社会全般かにより、コンセプトの表現法と発信法は変わってきます。

 

(3)周年事業の戦略策定

周年事業のコンセプトとターゲットを決めたら、周年事業の戦略策定、すなわち周年事業を自社経営のどこに位置づけるのかが第3のポイントです。

従来型の謝恩重視の周年事業が目的なら、販促イベント並みの準備と体制で十分でしょう。しかし、ブランディング戦略としての周年事業を目指すなら、組織的な全社的活動を長期的に展開することになります。したがって中期経営計画策定レベルの「周年事業戦略策定」が欠かせないでしょう。経営トップを始めとする経営サイドの積極的なバックアップも欠かせません。

 

(4)周年事業のリアリティ

どんなに優れた周年事業を準備・企画しても、社内で「周年事業を成功させるぞ!」の気運が盛り上がらなければ、周年事業の目的達成は覚束なくなります。

周年事業は社内横断型のプロジェクトチームが推進主体になるのが通例ですが、そのメンバー以外の社員全員が何らかの形で事業推進に参加する機会がなければ、社内に周年事業推進のリアル感が生まれません。リアル感がなければ社内の共感や自発的協力も得られないでしょう。

準備から実行までの様々な局面で周年事業推進コアメンバー以外の社員を周年事業推進に巻き込む仕組みや環境を作り、「周年事業のリアリティ」を現出する必要があります。

 

そして「5W2H」での資料化

前述の4ポイントのまとめが5W2Hといえます。

すなわち、準備プロセスでの検討事項を、

・周年事業のコンセプト……Why

・周年事業のターゲット……Whom

・周年事業の施策……What

・周年事業の推進体制……Who

・周年事業のスケジュール……When

・周年事業コンセプトの発信方法と周年事業の周知方法How

・周年事業を予算措置化するための経費見積もり……How much

――の形でまとめて文書化し、周年事業推進関係者全員が情報共有をできるようにしておく必要があります。

 

 

3周年事業のスケジューリングのコツ

 

周年事業の準備を進める上において、戸惑いやすいのが「いつ、何を、誰が行うのか?」のスケジューリングと言われています。最新型の周年事業は大半の企業が初体験なので、戸惑うのも当然でしょう。しかし、心配することはありません。このスケジューリングにもコツがあります。コツを押さえればもう安心です。

 

コツの周年事業に関わる数年間の大まかな日程を設定する

最初に、自社の「周年イヤー」を明確にします。これは年度と暦年のどちらを周年イヤーとするかで決めます。次に、周年イヤーの1年前は何をするのか、2年前は何をするのか……という具合に期間を区切り、期間ごとに処理すべき主な業務を洗い出します。

 

コツの月次スケジュールを作成する

スケジューリングの目安を立てたら、これを月ごとのスケジューリングに落とし込んでゆきます。

具体的には、後述(周年事業推進体制づくりのコツ)の実行委員会のチームごとにスケジューリング会議を開きます。そこでの討議により問題点、不確定要因、不測事態発生要因などのリスク1つずつ潰してゆきます。その上で予測不能な突発的事態が発生しても、余裕をもって柔軟に対応できる現実的なスケジュールを練り上げます。

最後にスケジュール表の縦軸に各施策と担当者、横軸に予定を記入すると、「誰が、何を、いつからいつまでにやるのか」が明確になります。ここで重要なのはスケジュール表作成を目的化しないことです。スケジュール表の目的は、あくまでもスケジュールの情報共有であることを忘れてはならないでしょう。

 

周年事業を全社的事業として盛り上げるためには、各施策の実行前に一般社員との情報共有を図っておくのはもちろんのこと、実行直後に施策の成果を一般社員にタイミングよくフィードバックする必要があります。さらに後日、周年事業に関する一般社員の声や社外の反響などをまとめて社内周知する活動も欠かせません。

このため、一般社員に発信する情報の内容やタイミングについても早めに検討し、スケジュールに落とし込んでおくのを忘れてはならないでしょう。

 

<まとめ>

周年事業は「会社を変える絶好のチャンス」との認識が高まってきた、周年事業は大手企業のみが実施している事業ではない事実が知れ渡ってきたなどを背景に、新たに周年事業実施を計画する企業が増加の一途を辿っています。ところが、新たに周年事業実施を計画する企業の場合は、大半の周年事業関連業務が初体験。

このため、「何から準備したらいいのか分からない」、「予算や体制は?」、「みんなが共感できる施策って何?」など、周年事業担当者はともすれば戸惑いがちです。しかし、本記事を参考にしていただければ、こうした戸惑いもなくせるのではないでしょうか。

 

 

 

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